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アニメや映画の“委員会活動”って何

2003年9月10日
 あずまんが大王製作委員会、サイボーグ009製作委員会、ナデシコ製作委員会、「座頭市」製作委員会――。アニメや映画の著作権表記を改めて見ると、「製作委員会」という表記を多く目にする。

 もちろん、この委員会は読者の多くが経験してきた学校の委員会活動とは全く別モノ。製作委員会とは、いわば「特定の映像事業を推進する組合組織」であり、アニメや映画を制作するための「資金」を集めるのと同時に、作品にかかわるさまざまなビジネスを推進していく組織なのである。

 ここで素朴な疑問がわいてくる。「アニメや映画は製作委員会がないとつくれないのだろうか」――。もちろん、そんなことはない。製作委員会は資金調達の1つの手段に過ぎない。従来はこの方式こそがもっとも効率的と考えられていたから多用されていただけなのだ。最近は、新しい「コンテンツファイナンス」が続々登場している。その最前線の情報を、みずほ銀行ビジネスソリューション部の逸見圭朗次長に解説してもらおう。(中村 均=日経キャラクターズ編集長)




テレビ年間7億円、映画一本3億円

 ちなみに映像作品をつくるためには、どれぐらいの資金が必要なのだろうか。アニメ製作を例に具体的に見てみると、通常地上波を媒体として放映されるアニメの場合は、30分の作品当たり1000万〜1300万円程度の制作資金が必要になる。

 番組は1クール(3カ月)を基準に編成される。1クールは13話分に相当。従って、一年間(4クール)継続して放映する場合は52話分の制作資金が必要になるわけだ。実際の金額で言えば5億から7億円程度である。一方、アニメ映画の場合は一般には1〜3億円程が主流。ただし、ジブリ作品や『イノセンス』『スチームボーイ』などは十数億〜20億円規模に達する。

 マクロ的で見ると、この「制作資金」をベースにした作品から二次的な著作権が発生し、それを利用した商品やサービスなどの最終市場は1兆円を超える規模になるわけだ。なかなかダイナミックなマーケットと言えるだろう。

委員会の成立の仕方とその役割

 製作委員会は、制作資金をどのように効率的に調達するのかをテーマに、運用されてきた方法だ。法的な視点から見ると民法上の「任意組合」という性格を持つ“団体”である。製作委員会における契約名称は一般に確定していないが、「共同事業契約書」あるいは「共同製作契約書」によって表わされることが多いようだ。

 アニメ製作のケースならば、出版社、ビデオメーカー、レコードメーカー、配給会社、玩具メーカー、プロダクションなどのアニメビジネスに関連する各当事者が出資して共同事業を営むわけである。従って、団体とは言っても、実質的な構成メンバーは各出資企業から派遣された代表(いわゆるサラリーマン)であるため、「ある程度の団体性を持つ」程度であるのが特徴だ。当然、法的な権利義務の主体にはならず、事業で上がった収益に対する税金の処理は参加各社がそれぞれ行うことになる。

 テレビシリーズを広告会社(広告代理店)が企画したケースを例に、この流れを見てみよう。広告会社は放送の主要メディアになる地上波テレビ局に話を持っていくと同時に、実際に作品を制作する現場のプロダクション(アニメ製作会社)を選定。また、番組スポンサー候補である玩具メーカーやビデオメーカーにも声を掛ける。そこが番組提供費だけではなく、出資することになれば、これら当事者が制作資金を持ち寄れば、これで1つの製作委員会が立ち上がったことになる。

 製作委員会を構成する組合員は当初の出資割合に応じて作品の著作権を共同で保有する。3社で委員会を構成し、各社がそれぞれ3分の1相当の資金を拠出した場合は、その作品の著作権を3分の1ずつ保有することになる。

 そして、各社が商品化やパッケージ販売を行った後に、その売り上げ(各社の手数料控除後)を委員会の口座に戻し、出資比率に応じて資金が配分される。具体的には、関連商品(菓子や玩具など)の小売価格に一定の料率(3〜5%)を掛けたロイヤルティー(ライセンス料)収入のほか、最初のテレビ放映後に作品が地方局や海外に販売される際の番組販売収入、DVDやビデオなどのパッケージ販売収入などが挙げられる。

 これらの各種収入を得られる「権利」の確保こそが、著作権を共同で保有する最大の狙いだ。従って難しい話ではなく、乱暴な言い方をすれば、「共同で賃貸マンションを購入して、そこから上がった収益を当初出したお金の割合に応じて受け取りましょう」というのと同じわけである。

製作委員会以外の手法とは

 製作委員会(任意組合)方式はここ数年で広く浸透してきているが、この方法以外にも、資金を集めるやり方はある。例えば匿名組合方式を使った方法だ。

 匿名組合は、コンテンツにかかわる事業展開は映画会社などの1社が集約して行う。一方、それ以外の組合員は純粋な投資家となり配当をもらうというやり方だ(例:映画ファンドへの投資)。

 だが、こんなことをしなくとも資金に余裕があり、作品がはずれたリスクも許容できるというのなら、そもそも1社ですべての資金を拠出してしまうやり方だってある。しかし、これは現実的ではないだろう。

 また、匿名組合方式の映画ファンドでも、投資に対するリターンの実績が明示されていなければ一般投資家は乗ってこない。

 こうしたことから、業界内で資金を出し合う任意組合方式の「製作委員会が簡単でやりやすい」ということになるわけである。

 だが、実は身近なところに制作資金を調達できるシステムがあったのだ。それが我々のような銀行をはじめとした金融機関なのである(ちなみにみずほ銀行はハリウッドにおける映画関係のファイナンスでは、米銀に肩を並べるほどの実績を持つ唯一の邦銀)。

 ただ、米国でフィルムファイナンスのノウハウを持つ我々であっても、国内のアニメ制作プロダクションなどと親交を深めれば深めるほど、プロダクションにおける資金調達の難しさがわかってきた。

 一番の問題は金融機関サイドにあった。それは企業を評価する際、将来の成長性や産業の強みを評価するよりも、市場価値が不動産などの「担保を持っているのか」に、評価の力点をおいてしまっていたからだ。その結果、“わかりやすい資産”である不動産や有価証券を持たない多くのプロダクションが資金調達で頭を悩ませていたのである。

 そこで、みずほ銀行は不動産ではなく、プロダクションが持っている“彼ららしい資産”であるアニメ作品を担保にしてみようと思いたった。

 これが2000年に開発したアニメ作品の著作権を担保に融資する「著作権担保融資」が生まれるきっかけである。



◎もっと詳しい情報は、9月10日発売の『日経キャラクターズ!』に掲載。全国書店、コンビニエンスストアで発売中。
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