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富士通 キャッシュフロー計算書で知る会社の実態と未来

2003年6月4日
 富士通が揺れている。今年4月25日に発表された2003年連結決算では1220億円の最終赤字。2期連続の最終赤字ながら決算発表直前に、秋草直之社長が会長に就任する人事を発表したため、メディアに経営責任を問われた。株式市場では産業再生機構の1号案件になるとの噂が流れるなど、厳しい評価が続く。

 一方、経営陣は「大型リストラは終わり。利益も出てきたし、今後業績は回復する」と言う。経常利益は黒字に浮上し「V字回復」の過程という主張だ。

 会社の主張と外部の厳しい評価、この乖離をどう埋めればよいのだろう。

 今年4月25日、富士通は秋草直之社長が会長に、黒川博昭常務が社長にそれぞれ「昇格」する人事を発表した。就任から4年、1人で勤めてきた社長兼会長の仕事を2人で分担するというのが秋草氏の説明だった。

 その数時間後、富士通は2003年3月期の連結決算を発表した。内容は2年連続の最終赤字。当然ながら、先ほど発表したばかりの続投人事に対してメディアの批判は集中した。

 富士通にしてみるとこれほどまでの批判は予想外のものだったかもしれない。と言うのも、最終段階では赤字だが、前期の公約である営業利益1000億円はクリアしたからだ。高谷卓副社長は「これまで下方修正ばかりして嘘つきと言われてきたが、約束した数字をきちんと守れるようになった」と語っていたのである。 

 2002年度の損益計算書を見てみると、営業利益は1004億円と、前年度比で1748億円も改善している。経常利益も124億円と黒字化している。最終赤字となったのは昨年人員削減を伴うリストラを実施し、多額の事業構造改善費用(1515億円)を特別損失として計上したため。

 その結果、税金等調整前利益では▲1476億円と赤字になったが、それとて前年と比較すれば4471億円改善している。つまり、特別費用さえなければ、売上高は下がっても利益が出る体質になったという理屈も成り立つのだ。

 それでも、市場は反応しない。2000年1月には5000円台をつけた株価はこの3年間で300円台まで下落したまま。投資家は今後の業績回復を全く織り込んでいないのだ。なぜか?

 その答えは「キャッシュフロー計算書=CF計算書」の中にある。損益計算書(PL)を見る限り、業績は回復しているように思われる。だが、CF計算書は別のストーリーを語る。

 すなわち「多額の資産や有価証券を売却することでお金を得る一方で、ハイテク企業の生命線とも言える投資を抑制してでも、お金の流出を抑えている」というストーリーだ。

 富士通の不振の原因は、国内企業の情報化投資の抑制によりメーンフレーム(汎用大型コンピューター)からパソコン、通信機器まで揃えたハード部門が一気に不振に陥ったことにある。さらに価格競争が激しい半導体、海外の通信事業が赤字を増やし続け、唯一好調なシステムサービス事業だけでは支えきれなっているのだ。

 だが、そうした状況で投資抑制を続けるだけでは復活への歩みを始めたと市場に受け取ってもらうのは難しい。

 CF計算書は貸借対照表(BS)、PLに続く第3の計算書と言われいる。これは企業の小遣い帳と考えればいい。ここに記録されているのは「損益」とは違う。あくまでも手元に残った「キャッシュ」の内容だ。ここでキャッシュと言うのは現金に加え、3カ月以内に現金化できる有価証券などを合算したものである。

 企業は商品やサービスを売る。その稼ぎで投資をしたり、借入金返済や配当金の支払いなどしたりする。企業が活動すると金庫にはキャッシュが入ったり出ていったりする。そこでキャッシュが入ればプラス、出ていけばマイナスと小遣い帳のごとく記録し、実際に手元に残っている金額が見えるようにしたのがCF計算書だ。

 「勘定合って銭足らず」の言葉のように、帳簿上の数字には企業の判断が入る。だが現金なら誰が数えても同じ。お金の出入だけをみるCFは正確な経営状態を物語る。それだけではなく、企業が将来に向けて積極的に投資をしているか、あるいは財務体質の強化を図っている状態なのかも見えてくる。企業の今と将来が見えてくる計算書なのである。

 CF計算書は基本的に3つの部分から構成されている。通常の営業活動によって発生したキャッシュの出入りを記録した「営業活動によるCF」。投資に関するキャッシュの出入りを記録した「投資活動によるCF」。そして、借入、増資、配当のような財務に関するキャッシュの出入りを記録した「財務活動によるCF」だ。

 営業、投資、財務の3つのバランスを見ることで企業が何をしてきたかが一目瞭然になる。

 では、実際にCF計算書を見ていこう。


■さらに詳しい内容が、「日経ビジネス アソシエ」6/17号でご覧いただけます。
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