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米政府がUALを救わなかった理由

2002年12月17日
 米航空大手のユナイテッド航空の持ち株会社であるUALは9日、米連邦破産法11条を申請し、事実上破綻した。期限が迫っていた負債の返済に必要だった債務保証に、政府が応じなかったことが引き金になった。

 「リストラに懸命に取り組んでおり、一定の成果も出た。だが現段階では破産申請が、事業の継続に最良の方法だ」(UALのグレン・ティルトン会長)。負債総額は228億ドル(約2兆8500億円)と米航空会社の破産では史上最大となった。ユナイテッド航空は世界第2位の航空会社。UALの2001年12月期の売上高は161億3800万ドル(約2兆173億円)、従業員数は8万4000人で、1位のアメリカン航空グループに迫る巨大航空会社である。

 日本ならば日本航空や全日本空輸が破綻するようなものだ。しかもユナイテッド航空が政府に対して債務保証を求めていた金額は18億ドル(約2250億円)だった。日本の主要ゼネコンが当たり前のように受けている数千億円単位の債権放棄と比較するとこの金額は小さく見える。例えば、今年11月、マンション分譲大手の藤和不動産はUFJ銀行から債権放棄を中心に2300億円の金融支援を受けた。この金額はユナイテッド航空が求めていた債務保証額と同じだ。

「一度は助けたのだから…」

 支援を求めた金額は相対的に大きくない一方で、雇用など経済に与える影響は無視できないのになぜユナイテッド航空は救済されなかったのか――。

 最大の理由は、昨年9月11日のテロの影響とは関係なしにユナイテッド航空の業績が悪化していたことがある。UALはテロの約1年前に当たる2000年7〜9月期から9四半期連続で赤字を計上した。米政府はテロの影響で業績が悪化した航空業界に総額180億ドル(約2兆2500億円)もの巨額の資金援助をした。しかし、それでも立ち直れない場合はそれぞれの会社の経営責任であるという立場を取る。

 特にユナイテッド航空の高コスト体質は米国の航空会社の中でも目立っていた。米大手銀行のJPモルガン・チェースの調査によると飛行機を1マイル飛ばすためにかかる費用はユナイテッド航空が11ドル。一方、コンチネンタル航空は8.9ドル、ノースウエスト航空は9.24ドルで、その差は大きかった。労働組合がUALの株式の55%を握っており、発言権が強いためにコストをなかなか削減できなかったことが響いた。

 債務保証が実現しなかったもう1つの理由は、ユナイテッド航空の破綻が米航空業界全体のリストラに弾みをつけるということにある。他の米航空大手の業績も軒並み低迷しており、コスト削減は急務である。破綻したユナイテッド航空が、大規模な人件費の削減を実行すれば、ライバルもそれに追随しやすい。

 「破綻によりユナイテッド航空は大幅なリストラを迫られる可能性が高い。政府が同社に対する債務保証を拒否したことは、他の航空会社にとって良いことだと考えている」。米投資銀行のゴールドマン・サックスのアナリストであるマイケル・グルーツマッハー氏は政府の判断を支持する。

 人件費の高さは、組合が大株主であるUALに限らず、多くの航空会社が抱える悩みだ。

運航は当面継続、事業縮小へ

 破綻が決まったユナイテッド航空だが、同社の航空機は現時点では従来通りに運航される見込みだ。「これまでと同じように運航を続ける。最も重要な顧客の安全にはこれまで同様、最大の優先事項として取り組んでいく」とUALのティルトン会長は強調する。マイレージの積算と特典への交換、全日空やドイツのルフトハンザ航空などとの「スターアライアンス」と呼ばれる国際的な提携関係、空港のラウンジサービスなども継続される見込みだ。

 それでも黒字化の達成には今後、大胆なリストラが必要。事業の大幅な縮小の可能性もある。ユナイテッド航空が再び競争力を取り戻すまでには、茨の道が続くことは間違いない。(山崎 良兵=ニューヨーク支局)
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