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ヤマト運輸が宅急便運転手に携帯電話支給

2002年10月9日
 ヤマト運輸が宅急便のセールスドライバー全員に携帯電話を持たせ、顧客と直接会話できる仕組みを整えた。

 これまで、不在などのために荷物が受け取れなかった宅急便の顧客は、「不在連絡票」に記された営業所かコールセンターに電話をかけて再配達を依頼し、営業所は業務用無線を使ってドライバーに指示を与えていた。だがこれでは、顧客の要望に迅速に応えることが難しくなってきたことから、一部地域で実験的に使ってきた携帯電話を10月1日に全面導入した。

●配達時間をきめ細かく

 ヤマト運輸は、携帯電話の導入によって顧客満足の向上とコスト削減を同時に実現できると期待している。

 宅急便の新しい不在票には、担当ドライバーの携帯電話番号が記されている。荷物の再配達を希望する顧客がその番号に電話をかければ、直接ドライバーと話ができる。それによって、再配達の時間をその場で決められるようになり、これまでよりもきめ細かい配達時間の指定も可能になる。

 運転中などドライバーが携帯電話に出られない時には、電話は7コール後にコールセンターに転送されるが、ドライバーの勤務時間に占める運転時間は、通常2〜3割程度とそれほど多くない。大抵の場合は、ドライバーにつながるという。

 従来だと、当日中の再配達を希望し、「何時に来てくれるか」と尋ねる顧客に対して、営業所側は「2時間以内にお届けに上がれます」といった程度のことしか答えられなかった。「今から買い物に出かけるから1時間後以降にしてほしい」と言われれば、営業所は再び無線でドライバーと連絡を取り、顧客に返答の電話を入れる必要があった。ドライバーが車を離れている場合は無線が通じないため、さらに時間がかかった。

 有富慶二ヤマト運輸社長は「顧客にとって、待つことは大きな苦痛。満足度向上のためにはその苦痛を取り除く必要がある」と言う。顧客を待たせず、即決するための手段が携帯だったというわけだ。

 ドライバーのモラール向上も狙う。ドライバーが顧客の声を直接聞く窓口となり、自らの判断で顧客に対応するようになれば、営業マンとしての自覚は高まる。接客応対の教育を充実し、サービス向上につなげる考えだ。

●事務社員の増加を抑える

 ヤマト運輸では現在3000店の営業所を5000店まで拡大する計画で、今後ドライバーなど集配送要員は一段と増える。一方で、拠点増が営業所内で働く事務社員の増加に結びつかないように、電話応対業務や伝票処理業務を集約するサービスセンターの展開を急いでいる。携帯電話の全面導入にも同じ狙いがある。ドライバーが顧客とやり取りすることで、営業所内での電話応対業務を減らし、人員増を回避する。

 通信コストも削減できる見込み。携帯電話の通話料は固定電話よりも高いが、顧客側からの発信で用件が済めば、料金は顧客持ちで、これまでのように営業所から折り返しの電話を入れる必要はない。営業所からドライバー間の連絡は、無線に代わり、携帯電話への通話となるが、この部分は主として音声通話よりも格段に料金の安い携帯メールを使うことで節約する。

 懸念があるとすれば、1つはシステムの信頼性だ。相手を選ばず送られてくる迷惑メールや、クリスマス時などに見られる通信量の激増に伴う不通状態が、業務を混乱させるリスクは否めない。ヤマト運輸は今回、3万2000台の携帯電話をKDDIから一括購入しており、KDDIに「十分な信頼性対策をしてもらった」(システム開発を担当したオペレーション部の北之口好文部長)と言う。だが、これまでの無線システムを全廃して、携帯電話に乗り換えただけに、不測の事態への備えは欠かせない。

 もう1つは安全対策だ。当然ながら、ヤマト運輸では運転中の携帯電話使用を禁じている。このルールの周知徹底は欠かせない。仮に事故を起こさなくても、運転中に携帯電話を使っている姿が目撃されただけで、社会から厳しい指弾を受けることを忘れてはならないだろう。(三橋 英之)
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