「家電量販店」の巻---電気街は生き残れるのか?
2002年9月4日
ストックが無かったので近所の電気屋に買いに行こうとしたが、あいにくとお盆期間中で休みだったため、仕方なくターミナル駅(横浜)まで出て探すことにした。駅周辺にはカメラ店系の家電量販店が多くあり、パソコンなどの情報家電を中心に賑わっている。もちろんエアコンや冷蔵庫といっった従来からの家電を扱う別館もある。
だが、有名店数ヶ所を回ったところで、私は呆然としてしまった。多くの店には、電球すら置いておらず、中にはヒューズという言葉を初めて聞くような表情を見せる店員もいた。パソコンのパーツやプリンターの消耗品は多種多様なものが用意されているのに対して、家電の方の対応は異様にすら感じられる。更にデパートにも足をのばしてみると、もはや家電の売り場が消滅しているか、テナントとして外部に依託しているという惨状だ。
雨の中で10軒以上も捜し回って足が痛くなり、そろそろ断念しようかと思った頃、ようやく目的のヒューズを発見した。単価が安くて売れ筋ではなさそうな商品を、経営危機が囁かれるスーパーで見つけたので、私は少し複雑な心境だ。それにしても、ヒューズ程度の「普通の」ものなら、近所の電気屋の店主のオヤジが「たしかこのへんにあったかな」とか言いながら、箱のホコリを吹き飛ばして取り出してくれるハズなのだが…。POSシステムとも無縁な商品は値段も不明だったりして、「50円でいいよ」などと適当な取り引きが成立することもある。
思えば昭和40年代前半頃まではテレビやラジオの背面を開けることは日常茶飯事で、真空管を取り替えるのは父親の仕事だったように記憶している。ひょっとして、トランジスタの普及が父親の威厳を低下させた一因かもしれない。それでも父親にはヒューズ交換という仕事は残っていた。家庭用の100V電源のヒューズはガラスのチューブではなく、碍子の中に鎮座するS字型のものだった。予備の買い置きが無く、店の閉まっている夜間は困るのだが、ハンダや針金で一時しのぎをするという、今にして思えば恐ろしいワザもあった。当時の商店の大部分は夕方には閉店してしまっていたのだから、致し方ない。そんな古き良き(?)時代もサーキット・ブレーカーの普及と共に消え去り、ヒューズは日常生活から隠蔽されてしまった。AV機器だけでなく、本当は自動車やバイクにだってヒューズが入っているのに…。
教訓1:電源あるところ、ヒューズあり。
回想ついでに、昨年の夏に懐中電灯の米粒サイズの電球を探し回ったことを思い出した。このときは結局、秋葉原まで行って入手した。昔の秋葉原は素人には入りにくい店が多かったが、いつの間にか量販店系の大規模な店が幅を利かせている。だが、量販店が秋葉原に集まる必然性があるのだろうか?
実際、新宿などにも量販店が増えているようだし、店鋪の規模や運搬の利便性から言えば、大きな駐車場を備えた郊外店の方が有利なようにも思える。そのうち、量販店は秋葉原から去り、老舗のパーツ屋と新興のマニアックな店だけが生き残るのかもしれない。
教訓2:電気街の真価は、値段の安さや売り場の規模ではない。
街の電気屋や量販店には無いものは、秋葉原に行けば必ず手に入る---そう皆に思われることが、電気街としての本当の価値ではないのだろうか。
だが、それでもやはり家電量販店にも電球くらいは置いておいて欲しいものだ。あと、個人的にはヒューズも…。
●著者:折中 良樹(フリーランス・ライター)
早稲田大学大学院(ロシア文学)中退。角川書店書籍編集部バイト、アスキー出版局契約社員を経て、1990年にフリーとして独立。何となく周囲に流されて、いつの間にか業界の王道を歩んでしまったらしい。近著に「NortonファミリーでMacを守れ!」「Mac OS X & 9 簡単LAN入門」「Mac OS Xのトラブルバスター」「電子メールのトラブル解決Q&A」(いずれも広文社)ほか多数。
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