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視点:「ペット・ロボット」---愛と利便性はアウフヘーベンできるのか?

2002年7月18日
 我が家でも子供の情操教育とかを考えて、ペットを飼うことになった。しかし、賃貸の集合住宅暮らしなので、犬や猫は禁止だ。だとすると金魚あたりが無難だろうか。だが、魚は触れ合いが少ないように思える。では、亀とか…。なかななか話がまとまらないので、とりあえず知人たちに参考意見を求めることにした。

 ある人は「ミドリガメは手を抜くと臭いがきつくなる」と言う。気にしなければ大したことはないようだが、あまりマメとはいえない我が家のメンバーには躊躇の材料となる。「では、陸ガメは?」と尋ねたのが運の尽き、ディープなウンチクに退散を余儀無くされた。どうやら相談する相手を間違えたらしい。

 触れ合いという点ではハムスターは有力な候補だ。数が増えやすいのは何とかなるだろう。夜行性だと指摘する人もいたが、我が家のヒト科の小動物も夜行性みたいなものだ。寿命の短かさは、その死が最大の情操教育となると考えれば欠点にはならない。

 だが、ハムスターには妻が反対した。「みんな飼っているからイヤ!」だそうだ。ひと頃の盛り上がりは沈静化したようだが、いまだに根強いファンは多いので、遅れてブームに便乗するような気恥ずかしさがある。

 何も決まらないまま休日に子連れで近所の家電量販店に行くと、ソニーのアイボが展示されていた。ボールと戯れるラッテとマカロンに、我が子は釘付け状態だ。「その手があったか!」血統書付きの犬よりも安いかもしれないし、日光江戸村の「ニャンまげ」に見えてしまう点には目をつぶろう。

 とはいえ心理的抵抗がないわけではない。ロボットは生き物ではないので、子供の心にどんな影響があるかも不明だ。その点を相談しようと家で妻を待っていると、何と彼女は手に鳥カゴを持って帰宅した。近所で不要になったものを譲り受けたらしい。これで他の選択肢は自動消滅した。

 後日、私の出勤時に妻は「今日、文鳥を買いに行って来る」と言っていたのだが、その日、家に帰るとカゴの中にはインコが入っていた。聞けば、文鳥は売り切れだったとのこと。こうして我が家のペット騒動は、意思とは全く無関係に決着してしまった。

 さて、成り行きで来たインコは実に困ったヤツで、フンをまき散らしたり、家中のものを齧って叱られ、あげくはドミグラスソースに飛び込むという暴挙にも及んだ。でも何故か、このあまり賢くもないインコが、とても可愛いのである。

 教訓:ペットは手間がかかるからこそ、可愛いものらしい。

 だとすると、ペット・ロボットもどんどん手間のかかる方向に進んでいくのだろうか。少し前のアイボの広告コピーでも、その方向性に触れている。ひょっとして将来はフンをしたり、死んだりするのかもしれない。だが、飼い主をツメで引っ掻いたりするのは、アシモフの「ロボット工学三原則」に反するのでは?

●著者:折中 良樹(フリーランス・ライター)
早稲田大学大学院(ロシア文学)中退。角川書店書籍編集部バイト、アスキー出版局契約社員を経て、1990年にフリーとして独立。何となく周囲に流されて、いつの間にか業界の王道を歩んでしまったらしい。近著に「Mac OS X & 9 簡単LAN入門/ちょ〜低予算でMacもWindowsもつながる本」「Mac OS Xのトラブルバスター/強制終了・リセットする前に読む本」「電子メールのトラブル解決Q&A」(いずれも広文社)ほか多数。
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