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トヨタ、中国で本格巻き返し---第一汽車と提携へ

2002年6月18日
 トヨタ自動車が中国自動車メーカー「ビッグスリー」の一角をなす第一汽車(長春市)と合弁生産を含む包括提携に間もなくこぎ着ける。トヨタは10月、中国の天津汽車(天津市)との合弁会社、天津豊田汽車(天津市)で新型小型車の生産を開始して中国現地生産の第一歩を踏み出すが、第一汽車との合弁が今後のトヨタの中国戦略に与える影響の大きさは天津汽車との合弁の比ではない。中国を舞台にしたトヨタの巻き返し策が本格化する。

 「立派な車で、『経済車』には見えないが、我々への情報が誤りだったのか」。6月5日、北京モーターショーの会場で、トヨタが天津汽車と合弁生産する「T-1」が初めて公開された。中国側記者からこんな質問が出て、トヨタ首脳陣も思わず苦笑いした。

 記者が怪訝に思ったのも無理はない。壇上でベールを脱いだセダンは1クラス上の「カローラ」と見まがうばかりのボリューム感を持っていたからだ。T-1発表の際のプレゼンテーションでも、経済性よりも高級感を前面に打ち出す仕掛けが凝らされていた。

 あくまで経済車の枠を外さない高級車――。世界のトヨタ車のラインアップの中で極めてユニークな仕様となったT-1には、天津汽車との合弁で中国生産をスタートしなければならなかったトヨタの苦しさ、そして第一汽車との合弁の重要さがにじみ出ている。

 トヨタは2000年、子会社ダイハツ工業からの技術援助で小型乗用車「シャレード」を生産していた天津汽車との合弁契約に踏み切るが、決して理想的な選択ではなかった。天津汽車は中国内で小型車の生産しか許されていない準大手クラスで、「世界のトヨタ」の受け皿にはなり得なかったからだ。

 それでもトヨタがこの合弁を選んだのは、中国生産の切符を手に入れることを優先したため。トヨタとの合弁で天津汽車が実力をつければ、経済車だけでなく、第2、第3の車種を投入してフルラインメーカーへの道も開ける、との計算も働いた。

●誤算がトヨタを味方

 トヨタにとって不運だったのは、合弁生産の準備中にパートナーとなる天津汽車の経営不振が深刻化したことだ。シャレードの基本設計は20年以上も前のもので、トヨタの技術援助で追加した「プラッツ」も不発。販売台数がみるみる落ち込んでいった。

 だが、誤算が逆にトヨタに味方する。第一汽車が天津汽車を傘下に入れて事実上、救済する方向に動き出したからだ。中国事業担当の豊田章男取締役はT-1発表の場で「あくまで中国におけるフルライン生産を目指す」と述べ、合弁生産は今の天津汽車との間だけにとどまらないと示唆した。

 第一汽車は独フォルクスワーゲンとの合弁を含めて、中国内でフルライン生産を認められている。中国市場の主戦場となっている中型車では、海外市場で定評のあるトヨタの「カムリ」と競合する車種を持たないのもトヨタにとって好都合だ。また、第一汽車本体は「アウディ」をベースとして政府要人も乗る高級車「紅旗」を作っているが、モデルが古くなっており、高級セダンである「クラウン」が後釜に収まるには申し分ない。

 もともとトヨタとの連携に興味を持っていた第一汽車と、フルラインの切符を欲しかったトヨタ。海外メーカーが中国内メーカー2社と合弁するのは難しいという、中国の自動車政策の壁に阻まれていた両社は、「天津汽車の救済」という名目の下、ウルトラCを繰り出した。天津汽車を巻き込んだ第一汽車との合弁の妙は、生産基地を天津から移動する必要がなく、既に天津に進出してきている多くの日系部品メーカーという“インフラ”をフルに活用できるところにある。

 中国ビッグスリーの1社「東風汽車」と手を組む日産自動車、実績ではナンバーワンのホンダ、そしてトヨタ――。日系3社の中国での戦いが本格化する。(谷口 徹也=香港支局)
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