このページの本文へ
ここから本文です

米市場で日本車が大躍進、10年ぶりに最高シェア更新

2002年5月8日
 日本の自動車メーカーの米国市場での躍進が止まらない。2001年の米国市場の全販売台数は1718万台と高水準を誇ったが、うち日本勢のシェアは26.6%と、10年ぶりに最高記録を塗り替えた。日本メーカーは昨年11月にホンダがアラバマ州に新工場を開設。来年はトヨタ自動車もアラバマ州に、日産自動車がミシシッピ州に工場を稼働予定と拡大一辺倒である。

 人員削減や工場閉鎖を進める米フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、独ダイムラークライスラーとは対照的だ。

 しかも為替レートが1ドル=130円まで下がり、ついには日本の自動車メーカーの純利益が、9年ぶりに米国メーカーのそれを上回る見通しとなった。こうなると米国勢の怒りは収まらない。「日本メーカーは円安のおかげで利益が増え、研究開発に多くのお金を注げる」(GMのボブ・ラッツ副会長)と、口を開くと文句ばかり出る。

 だが、米国勢が真に恐れているのは、単に利益の逆転や市場シェアを奪われることではない。米国市場で日本勢が米国メーカーに先駆けて、多くの新しい戦略を打ち出したことだ。

 現に、日本勢の斬新な試みは、販売から技術面にまで及んでいる。

トヨタ、若者向けネット販売網

 今年3月末に、米ニューヨークで開かれた自動車ショー。米国の展示会にもかかわらず、一番目を引いたのはトヨタの新車発表会だった。

 イベントホールを貸し切り、そこに若者向けダンス音楽を大音量で流す。さらに暗闇にはレーザー光線を交錯させる。ディスコを思わせる会場で、米国トヨタ自動車販売のジム・プレス最高執行責任者(COO)が披露したのは、若者向け新販売網の「サイオン」と、その新車種である。

 壇上に並んだのは「bbX」と「ccX」という名前の2車種。「bbX」は日本で発売している小型ワンボックスワゴンの「bB」を米国向けに仕様変更したもので、「ccX」は全く新しいデザインの車だ(下の写真)。来年6月に発売予定で、2004年にはさらに1車種を投入する。価格はすべて1万8000ドル(約234万円)以下に抑える。

 既にトヨタは米国で、高級車を扱う「レクサス」と一般向けの「トヨタ」の2つの販売網を持つ。2001年の「トヨタ」の1店舗当たりの販売台数は1264台と全米1位。「レクサス」(1161台)も2位につける。実に3年連続で1、2位を独占しているほどの好調ぶりで、昨年の市場シェアは10%を超え、ダイムラークライスラー(13.2%)と肩を並べるほどにまでなった。

 この勢いに乗り「若い世代に支持される車を作る」(米国トヨタ自動車販売の稲葉良〓社長=本社取締役)と若い消費者の獲得に力を入れ始めた。

 米国では今、「ジェネレーション(世代)Y」と呼ばれる、17〜24歳の若者が格好の販売対象になっている。その年齢層に属する人数は約6000万人に達し、ベビーブーマー世代(1946〜65年生まれの人々)に匹敵する巨大な購買層だけに、米国メーカーも若者向けの新製品開発に余念がない。

 しかし、トヨタのように独自の販売ブランドを作ったところはまだない。ここが米国メーカーには脅威に映る。

 もっともトヨタは「サイオン」専属の販売店を設けるわけではない。実は、インターネットを強力な“販売網”にするのだ。「サイオン」の車種に関する情報はすべてネット上で公開する。

 お客は、車の色や内装、さらにオーディオ、スキーなどを載せる荷台、カップホルダーまで、あらゆる仕様を決められる。見積価格まで出して購入の意思を固めたうえで、販売店に足を運んでもらう…。これが基本的な販売の仕組みだ。「ネット上での契約率を高めたい」と稲葉社長は意気込む。

 「サイオン」の車種を扱うのは、既存の「トヨタ」店の仕事。「トヨタ」店の中に「サイオン」専門の売り場を設け、販売員がインターネットで予習してきた若者客の質問に答える。

 これまでのように、顧客に世間話と値引き額を提示する伝統的な対面販売とは大きな違いがある。稲葉社長は「教育に時間がかかるため、販売店は徐々に増やしていく」と話す。

 発売から8カ月は米最大の市場であるカリフォルニア州の販売店に限定し、その後、全米に展開する。2005年までに年間10万台を目指す。

 斬新な試みを「トヨタは(後発ながら)米国でレクサスを高級車のトップブランドに育てた実績がある。サイオンにも期待できる」(米メリルリンチのアナリストであるジョン・カセサ氏)と周囲は前向きに見ている。

 販売で先んじるトヨタに対して、環境技術で打って出たのがホンダだ。

 この春に乗用車「シビック」のハイブリッド車を1万9550ドルで発売、先行するトヨタの「プリウス」の価格より約1000ドルも安くして業界を驚かせた。米国ホンダのトム・エリオット執行副社長は「シビックのハイブリッド車は月に2000台は売る。それでも控えめな数字。とにかく米国で広く普及させる」と強気だ。

吉野社長が極秘でGMを訪問

 さらにエリオット執行副社長は、米国でのホンダの高級車販売網「アキュラ」でもハイブリッド車を販売する方針を示した。高級車販売網向けに製品を出すのは業界でも初めてとなる。

 対象となる製品はスポーツ・ユーティリティー・ビークル(SUV)の「アキュラRDX」(発売時期は未定)で、「外観のスタイルは変わるだろうが、走りの良さも訴える商品にする。遠くない時期に発売する」(エリオット執行副社長)。ハイブリッド車について米国勢は、来年から商品を出す予定。それに先駆けホンダは普及車から高級車まで幅広く製品を揃える。

 昨年12月には吉野浩行社長がGMを極秘訪問し、ハイブリッド車や燃料電池車についても意見交換した。米国メーカーを巻き込む動きさえ、見られるかもしれない。

 インターネットのトヨタや、技術のホンダに対して、実直に「ブランド」の改善を進めているのが日産だ。カルロス・ゴーン社長のかけ声の下、米国に1100ある全ての販売店の改装に乗り出した。

 これは看板からインテリアまでを新しい日産のロゴやデザインに統一するもの。既に日産車だけを扱う100の販売店が改装を始めているほか、「来年3月までに300店、その後3年をかけてすべての店を改装する」と米国日産のジェド・コンネリー上級副社長は明かす。
 米国市場で日産は既に発売した「Z」や「アルティマ」をはじめ、これからも新型SUVの「ムラーノ」やピックアップトラックなど新製品が目白押し。「小型車から大型車まですべての製品群が揃う」(コンネリー上級副社長)のを機に「日産ブランド」でお客を呼び込もうとしている。

 2002年の米国市場の販売予測は、約1550万台と前年より10%以上も落ち込む。だが、トヨタとホンダ、日産の幹部は「今年の販売台数は昨年を上回る」と強気だ。

 これに対して米国勢は激しい人材交流で防戦に励む。

 GMは旧クライスラー出身のラッツ副会長を迎えるなどスカウトに忙しい。フォードは、高級車販売網を改編し、その責任者にマーク・フィールズ現マツダ社長を抜擢する。ダイムラークライスラーはユルゲン・シュレンプ会長が、かつてクライスラーを復活させたリー・アイアコッカ氏と打開策を話している。

 どの首脳も頭にあるのは「日本メーカー対策」。9年ぶりに追う立場になった米国勢は、どんな手を打ってくるのか。政治家へ「円安は不公平」と訴えても決め手にならないことは、誰もが知っているだろう。(酒井 耕一、山崎 良兵=ともにニューヨーク支局)
ここから下は、関連記事一覧などです。画面先頭に戻る ホームページへ戻る

記事検索 オプション

SPECIAL

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。

ご案内 nikkei BPnetでは、Internet Explorer 6以降、 Safari 2以降、Opera 8以降、Netscape 8.1以降またはHTML 4.01/CSS level 1, 2をサポートしたWebブラウザでの閲覧をお勧めしております。このメッセージが表示されているサポート外のブラウザをご利用の方も、できる限り本文を読めるように配慮していますが、表示される画面デザインや動作が異なったり、画面が乱れたりする場合があります。あらかじめご了承ください。

本文へ戻る