日立のストレージ戦略--技術力武器にEMC追撃へ
2002年4月12日
現在、世界市場で日立のシェアはエンタープライズ向けのSAN(Storage Area Network)が出荷容量で22%(2000年度実績)、ミッドレンジ向けが同5%(同)という状態。対して、世界市場で1位のEMCのシェアはエンタープライズ向けが43%、ミッドレンジ向けが29%で、日立は大きく水を空けられている。
また、「エンタープライズ市場を重視しすぎて、データセンターで需要の高いNAS(Network Attached Storage)への対応が遅れた」(中野俊夫・RAIDシステム事業部製品企画部長)ことにより、日立が2001年になってようやく参入したNAS市場では、米Network ApplianceとEMCの2社が独走状態。日立の存在感はないに等しい。これはストレージ管理ソフトの市場についても同様で、日立は同市場に2001年になって参入。EMCや米IBM、管理ソフト専業の米Computer Associatesや米Veritasに先行されている。
しかし、日立は「SANとNAS、SANとNASのストレージ統合も含め、ハードウエアとソフトウエアを合わせて世界一を目指す」(中野部長)と意気込む。では、その強気な姿勢の背景には、何があるのか。
●ハードウエアは完全に勝る
ディスクアレイのストレージ市場における日立の武器は、やはり技術力だ。日立が販売するSAN製品「SANRISE」シリーズはクロスバスイッチを中心に階層型のスターネット・アーキテクチャを採用している。これにより、最大6.4GB/秒という高速データ転送を実現する。これは従来のコモンバスを利用したデータ転送と比べて数倍以上の速度にあたる。中野部長によれば、「クロスバスイッチを持つストレージ製品を提供できるのは日立とNECだけ。EMCと比べても、ハードウエアはほとんどの面で勝っている」とする。だが、「ストレージ管理のソフトウエアやソリューションは、正直言ってEMCの方が上だ」(中野部長)。
販売パートナーの存在も日立の強みだ。日立はSANRISEを米Hewlett-PackardへOEM供給、米Sun Microsystemsとはリセール契約を結んでいる。日本オラクルやVeritas、マイクロソフトなどのソフトウエア・ベンダーともアライアンスを組む。
●DRAMの轍(てつ)は踏まない
しかし、日立のストレージ事業にも不安材料はある。ビットあたりの単価が年率3割弱の割合で下落していることだ。これは、アジア勢の追い上げによって壊滅状態に陥ったDRAM事業を想起させる。将来、ストレージ事業がDRAM事業と同じ運命をたどることはないのであろうか。
この懸念に対しては、「DRAMと違ってストレージはハードウエアだけではない。ディスクコントローラのマイクロコード(ソフトウエアの一種)や管理ソフトウエアも含まれている。ソフトウエアについては価格の急落は考えにくい。ハードウエアで収益を落としたとしても、ソフトウエアの付加価値で補えると考えている。特に、マイクロコードの開発はノウハウの塊。ちょっとしたオンライン・システムよりもスケールが大きい。マイクロコードの技術を(韓国などのアジア企業が)簡単にキャッチアップできるとは思えない。HDDにしても180GBを開発できているのは現在のところシーゲートだけ。韓国企業などはまだトップレンジのHDDは作れていない」(中野部長)と反論する。
調査会社のIDCによれば、企業内のデータ量急増にともない、ストレージの出荷容量は2005年まで年率で4割近い伸びを示すと見込まれている。従来、ストレージは“サーバーの付属物”との見方が強かったが、将来は、RAID型ストレージの出荷金額の割合がサーバーのそれを上回り、ストレージ中心のシステムが主流となる時代が予測される。半導体に代わり“産業の米”となる可能性も高い。SANについてはすでに好調で国内トップであるストレージ事業が日立再生のカギとなるか、今後が注目される。(武部 健一)
■関連情報
・日立製作所「SANRISE」のWebサイト http://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/storage/diskarray/
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