マンション建築費、突如上昇の怪
2001年7月4日
「年明けごろから突然、建築費が上がり始めた。全国的な傾向で、値上がり幅は2割を超えている。今までのように見積もり段階で『この値段で』と複数のゼネコンに価格を提示しても、断られるようになった」(大手商社のマンション販売担当者)、「ゼネコンが採算見通しをはじいて赤字になりそうな仕事は受けなくなった。建築費は少なくとも15%以上上がっている」(ワンルームマンション業者)。
ここ2、3年、ゼネコン業界は赤字になりそうな仕事でもどんどん引き受けていた。受注量が落ち込んでしまえば企業存続も危うくなると考えて、背に腹は代えられず、採算を度外視して受注していたのだ。赤字が決算に反映されるのは受注案件の完成時期になるため、「それまでにはコスト削減などで赤字幅を縮小できるだろう」との甘い読みもあった。特に、1999年に激しい受注競争が繰り広げられた東京・JR品川駅前の大型再開発は、ゼネコン業界のダンピング競争の象徴的な案件として知られている。
大型工事では時に赤字を覚悟してでも受注するのもやむを得ないが、問題なのは仕様が決まっていて、コスト削減余地のほとんどないマンション工事まで価格競争の対象となったことだ。
それでは、なぜここへきてマンション建築費が上がり始めたのか。
大手商社のマンション担当者は、下請け企業で働く現場の職人が相次ぐ労賃引き下げに反発した結果ではないかと推測する。下請け企業の経営状況は厳しく、忠誠を尽くしても雇用が確保される保証はない。それならば少しでも賃金の高い建設現場を渡り歩こうと考える職人が増えたというのだ。実際、この担当者はある建設現場で、若い塗装工が携帯電話で仲間と連絡を取り合い、「そちらの方がいい賃金だから、明日からそちらへ行く」と話すのを耳にした。下請け企業も職人確保のためには、ゼネコンからの仕事を何でも引き受けるわけにはいかなくなった。
一時的現象に終わる可能性も
このほか、銀行の締めつけが厳しくなったと分析する向きもある。債権放棄を受けたゼネコンは目先の受注量を確保するため、ほかのゼネコン以上に採算を度外視する傾向が強かった。しかし、完成してみると大幅な赤字になるケースが続出したため、メーンバンクが受注活動に厳しく目を光らせるようになったというわけだ。
ある準大手ゼネコンは「昨年末に大手ゼネコンがマンション業者の発注希望価格を蹴ったとの噂が広がり、雰囲気が変わったようだ」と話している。
現在、マンション業者は販売価格を設定する際にコストを積み上げていく方式ではなく、まず売れそうな販売価格を推測してその範囲内に土地代と建築費を抑えようと考える。建築費が上がったからといって、そのまま販売価格に転嫁すれば大量の売れ残りを抱えてしまう恐れがある。それだけに、簡単に販売価格を引き上げるわけにもいかず、対応に苦慮している。
とはいえ、ゼネコンの過当競争は何ら解消されていない。大型再開発案件では、今なお懲りもせずダンピング競争が繰り広げられている。今後、本格的な構造改革を背景に、雇用不安が一段と高まれば、下請け企業の反乱も一時的な現象に終わる可能性がある。マンション建築費の上昇傾向がこのまま続くとは考えにくい。(山口 雅司)
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