日活再建を早めたナムコが「映像都市」構想
2001年2月21日
傘下の映画会社である日活(東京・文京区、中村雅哉社長)と共同で「新映像都市構想」を立ち上げ、東京都と横浜市に、この構想の受け入れを働きかけているのだ。
そのために、会社更生の途上にあり、2011年までに債務(約160億円)を全額弁済する予定だった日活の更生手続きを前倒しした。東京・調布市にある映画撮影所を中村社長の個人会社「マル」に売却して得た資金などを原資に、今年1月31日、債務の残額約95億円を一括弁済し、事実上の再建を果たしたのだ。
再建を果たした日活と親会社のナムコが目指す新映像都市構想とは、首都圏に「映像産業と文化を発展させるための拠点を作る」(中村社長)ことだ。
具体的には、東京都か横浜市のいずれかに最低でも1万坪(約3万3000m2)の用地を確保、アナログ、デジタルを問わず映画やテレビ番組、テレビコマーシャルなどを制作できる撮影スタジオを建設し、核とする。周囲には、通信衛星を利用した映像配信設備や映像制作の実務を教える学校、映画館、商業施設、過去の映像作品を集めた資料館(アーカイブ)などを配置していく腹積もりだ。中核となる撮影スタジオは、日活倒産後ですら56本の映画・ビデオ映画を制作してきた実績を持つ同社の映画撮影所を移転させる。
最大の難関は資金調達
この構想の最も顕著な特徴は、単なる施設を建てるだけでなく、自治体や地元の協力を仰ぎ、地域ぐるみで映像を発信していこうと考えている点だ。
現在、神戸市や大阪市など各地で、自治体が音頭を取って映画やテレビドラマなどの撮影を誘致する動きが見られる。ナムコグループは、自治体が旗を振って、こうした撮影誘致などの試みと撮影スタジオを組み合わせることで、「常に都市から映像文化を発信している状況を作り出す」(中村社長)ことを狙っている。そうなれば、新映像都市の中核に位置するナムコの映像事業も膨れ上がるというわけだ。
実際、昨年10月に中村社長から映画人育成を目的に2億5000万円の寄付を受けた東京芸術大学の澄川喜一学長は、「21世紀の日本は文化立国を目指さねばなりません。そのための人材育成が東京芸術大学の使命です」と明言。新映像都市構想に期待を寄せ、実現した暁には、何らかの形で参画することに含みを持たせる。接触を受けた東京都と横浜市も、ともに前向きに取り組む姿勢を見せているという。
「今月中に構想の中身を詳細に詰め、自治体と再交渉する。自治体が賛同し、既に選定してある候補地の中から実際の核となる場所を選べれば、年内に新映像都市構想の一部を稼働させることも可能」と中村社長の鼻息は荒い。
とはいえ、構想が実現するまでには多くの課題が残されている。最大の難関は資金調達だ。2001年3月期に、ナムコは株式上場以来初めての連結最終赤字に転落する見込み。余裕は乏しくなる。中村社長自身も、「1社でやる事業ではない。僕の個人会社を含めナムコグループで用意できるのは100億円程度。後は他の映画会社やゲームソフト会社、デジタル映像の制作会社、映像制作を教える学校などに提携を働きかけ、協力を仰ぎたい」と話す。
だが、協力を仰ぐ企業は一方でナムコや日活にとって競合他社であり、すんなり話がまとまるかは分からない。賛同する企業を増やして構想を具体化できるかは、ナムコと日活が自治体と強固なパートナーシップを組み、「映像都市を目指す」という自治体自身のやる気を表に出せるかどうかにかかってきそうだ。(降旗 淳平)
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