ドコモの寡占化、これだけの“弊害”
2000年10月10日
持ち株体制に再編された日本電信電話(NTT)の在り方を再び見直すNTT再々編の議論が、郵政大臣の諮問機関、電気通信審議会で本格的に始まった。9月にはNTT持ち株及び東西地域会社のNTT3社ほか、KDDIなど新電電の主要通信会社のトップに対する公聴会が開催された。冒頭の奥山発言はその公聴会で飛び出した。
新電電の屋台骨揺るがしかねず
再々編議論は市内網を独占するNTTの経営形態が焦点になっている。高速インターネット網の普及では欧米のみならず韓国や台湾などにも後れを取りつつある。東西地域会社が独占する光インフラを開放しなければ、格差は広がる一方という危機感が政府にあるためだ。
だがKDDI、日本テレコムといった新電電各社にとって、最大の敵はNTTの地域会社よりも、移動体通信市場で寡占化を進めるNTTドコモだ。新電電の売り上げ構成を見れば、理由が分かる。KDDI、日本テレコムの連結売り上げ構成比を見ると、移動体事業は全体の7割から8割と高水準だ。このままドコモの寡占が進めば、新電電の経営の屋台骨を揺るがしかねないのだ。
その兆候は表れている。KDDIの2000年3月期の連結セグメントを見ると、移動体事業は400億円強の営業赤字だ。2000年3月期時点で11社ある携帯電話会社の3社が債務超過だ。日本テレコム傘下の携帯電話会社J-フォンも、3月時点ですべてのサービス会社が債務超過で、その額は1100億円を超えた。今年5月の増資でようやく債務超過を解消した。
かたやドコモの業績は絶好調だ。NTTの連結セグメントを見ると、2000年3月期の移動体事業、すなわちNTTドコモの営業利益は5448億円。高い収益性はNTTドコモの財務に表れている。連結純資産約2兆円のうち、連結剰余金は約6500億円。投資がかさむ設備産業にもかかわらず、連結自己資本比率は5割を超えている。
底堅い財務基盤は揺らぐ気配はない。今年8月の単月で見た場合、携帯電話の純増数は63万4600台だが、このうちNTTドコモは49万2000台と全体の8割近くになる。
8月時点でPHS、携帯電話の累計普及台数は6087万台。このうちドコモは3365万台とシェアの55.3%を占める。携帯電話だけで見るとドコモのシェアは58.3%。将来性を期待されているインターネット型サービスでは、端末を超えるシェアを獲得している。8月末時点でドコモのiモード契約者は1109万人に対し、新電電は2グループ合わせても619万人。ドコモのシェアが64.2%を占める。もう誰にもドコモは止められない――。
端末開発、ネットサービス…疑惑次々
昨年12月。1つの“事件”が起きた。カラー液晶搭載の携帯端末の第1号機が、当初の予想を覆してNTTドコモから発売されたのだ。カラー液晶搭載機は、昨年11月1日、日本テレコム系のJ-フォンが、真っ先に発売を表明していた。発売日は12月10日。11月時点でドコモはカラー端末について沈黙していたが、実際の発売はドコモの方が1週間早かった。
先を越されたJ-フォンは、カラー液晶付き携帯電話の品揃えを増やして、挽回を図ったが、カラー液晶がなかなか手に入らなかった。数カ月前は必要量の6割の水準だったという。「カラー液晶端末の開発は2年前から計画し、部品の調達計画も事前に示していた」(J-フォン)。
NTTドコモはかつてメーカーが新電電側と端末を共同開発する際に、必要な技術開示を遅らせるなどで公正取引委員会から改善措置を命じられた。こうした経緯があるだけに、カラー液晶の件でもNTTドコモが力にものを言わせて、メーカーに圧力をかけているのではと、新電電陣営は疑う。
シェアの高い取引先にメーカーが部品を優先供給するのは、市場原理が働いた結果とも言えるが、経済原則では理解し難いことも起きている。
例えば、着信音の話。携帯電話会社は着信音の高品質化を競っている。従来は4和音だったのが、今は16和音かそれ以上になろうとしている。
J-フォンはあるメーカーに16和音を出せる携帯電話機の開発を持ちかけたが、4和音ならば可能と婉曲的に断られた。そのメーカーはNTTドコモに既に16和音の携帯電話機を供給しているにもかかわらずである。これは「販売シェアの問題として、片づけられない。NTTドコモが巨大であるがゆえの歪みではないか」(J-フォン)。
疑念はつきない。今、脚光を浴びるインターネット対応サービス。ドコモの「iモード」に対抗し、J-フォンは「J-スカイ」、KDDI陣営は「EZweb」を立ち上げた。勝負の分かれ目は、提供する情報の数だ。しかし、iモードに情報を提供している会社に、新電電陣営にもと話を持ちかけても、色よい返事をもらえないという。
新電電の「J-スカイ」「EZweb」も600万人以上の契約者がいるため、情報提供会社にもiモード以外のサービスに提供するメリットはある。にもかかわらず進まないのは、「NTTドコモに対する様々な配慮が働いているためだ」(KDDI幹部)。「新電電に同種のサービスを提供したら、iモードの公式認定を外すといった様々な圧力をかけられている」(同)という。
ある情報提供会社によれば、iモードで提供している情報を新電電向けに提供する際は、「少なくともNTTドコモとの話し合いの中で生まれたサービスは外す」。NTTドコモ側は「端末メーカーや情報提供会社に圧力をかけることなどは全くしていない」(藤原塩和・企画調整室長)とする。
近く郵政省はNTTドコモをNTTの東西地域会社と同様に、規制すべきかどうかの検討を始める。地域会社の加入者網のように、他の事業者では代替しにくい設備を保有する場合は、ネットワークの接続で一定の義務を負わせるというものだ。
新電電側は、ドコモと接続で問題になることは少ないため、従来型の規制で律するのは不可能だという。欧米のように、シェアなど市場の支配力を基に規制すべきと主張。NTTドコモは「料金の値下げが進み、新規参入で弊害が出ていないのに、規制を強化するのは理解できない」と反論する。
通信自由化から15年。日本の通信政策は事業法的な事前規制から競争法的な事後規制へと転換が求められている。NTTドコモに対する規制問題は、日本の通信市場が従来型で対処するのか、ニューエコノミー型に変わるのかの試金石になる。(真弓 重孝)
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