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第2の「サラ金地獄」がやってくる?--激変する消費者金融

2000年6月21日
 6月8日、消費者金融の最大手、武富士は創業者の武井保雄会長が社長を兼任する人事を発表した。70歳にして再び社長登板となる異例の人事は、揺れる業界の状況を象徴している。

 「サラ金地獄と騒がれ、大手各社が存亡の危機に立たされた1983年以来の激変期だ」(大手幹部)

 表面上の数字だけを見ると、こうした業界内の慌てぶりは理解できない。大手各社の業績は、軒並み過去最高益を更新し、絶好調なのだ。99年度の連結純利益では、武富士は1138億円で前期比33.8%増と急伸している。アコムは743億円、プロミスは585億円で大手銀行・証券と肩を並べる数字だ。

大手と組み攻勢かける都銀

 だが、消費者金融業界に今、2つの荒波が押し寄せている。

 1つは、都市銀行などが低い貸出金利で消費者金融業に次々と参入していることだ。これまで大手各社の貸出金利は概ね20%台だったが、都銀は10%台で勝負を挑んできたのだ。

 都銀がこれまで参入できなかった理由は、個人の信用リスクを瞬時に判断できなかったことがある。過去の消費者金融での借り入れや返済の実績が把握できず、個人への貸し付けノウハウが確立できなかったのだ。貸金の回収業務の難しさも、銀行に二の足を踏ませた。

 だが、ここにきて都銀と大手消費者金融が相次いで手を結んでいる。銀行の信用力と資金力に、消費者金融業者のノウハウが結びついたわけだ。

 6月8日、さくら銀行は九州を地盤とする大手消費者金融、三洋信販などと合弁会社「さくらローンパートナー」を設立すると発表した。金利の上限を18%とし、多くは10%台半ばの金利で貸し出す見込み。7月中にも業務を始める。

 三和銀行も、プロミスと組んで5月に合弁会社「モビット」を設立しており、金利を15〜18%と低く設定して、9月に業務を開始する予定だ。

 「消費者金融は利用したくない、と言っていた人を対象に顧客を開拓していく」とプロミスの神内博喜社長は話す。これまで、消費者金融の顧客は年収600万円以下の若年層が中心だったが、新会社では銀行のブランド力も手伝って、より高い500万〜800万円の年収層を取り込めると見込む。

 他の消費者金融業者は、こうした動きに危機感を強めている。新設された銀行系2社は、巨額の貸出残高を目指している。さくらローンパートナーは開業4年で貸付残高を6000億円にするという。モビットも3年で3000億円を目指す。仮に実現すると、合計で1兆円近い貸付残高になり、大手各社と肩を並べる数字になる。

 「軒先を貸して、母屋を取られることにならないか」。ある大手のトップはこう表現する。消費者金融が長年培ってきた信用情報やノウハウを貸したところ、大事な顧客を総ざらいにされることを危惧しているのだ。

 もう1つ大手を悩ます問題がある。

 6月1日、出資法が改正され、上限金利が40.004%から29.2%に引き下げられた。昨年、日栄など商工ローン業者の違法取り立てが社会問題となったことを契機に、貸金業の上限金利が高すぎると批判されたからだ。

 大手各社は、既に29.2%以下で営業しているので、直接の影響はない。だが、全国で1万社近いと言われる消費者金融業者のうち、法改正が決まる前にこの数字をクリアしていたのはわずか十数社だったと言われている。ほとんどの業者は経営が圧迫されることになり、強引な取り立てに走ったり、違法な金利を取る「ヤミ金融化」が進むと予想されている。

 また、30%台でしか借りられない顧客層が自己破産したり、ヤミ金融の餌食になる事態も考えられる。そうなれば、「第2のサラ金地獄」という社会的問題が起こることもあり得る。

 新規参入組との熾烈な顧客奪い合いと、ヤミ金融の増加による業界秩序の悪化――。絶好調決算の裏側で、消費者金融業界は大きな曲がり角にさしかかっている。(金田 信一郎)
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