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コナミ対ナムコ・ジャレコ、特許めぐり「果てなき闘争」

1999年9月14日
 「業界全体の利益を考えない利己的な行為だ」――。ゲームソフトメーカー、ナムコの中村雅哉社長と、同じくジャレコの金沢義秋社長は、半ばあきれ気味に言う。2人が非難しているのは、同業のコナミだ。ナムコ・ジャレコ対コナミの2陣営は現在、ゲームセンター向けの「業務用ゲーム」の分野で、激しい特許紛争を繰り広げている。

 ことの発端は今年6月、コナミがジャレコのゲーム機「VJ」の製造、販売の差し止めを求める仮処分を、東京地裁に申請したことにさかのぼる。VJが、コナミのゲーム機「ビートマニア」の特許を侵害しているというのがその理由だ。

 ビートマニアは、音楽に合わせて疑似演奏が楽しめる「音楽ゲーム」と呼ばれる分野の製品。1997年に発売され、家庭用ゲームに客を奪われ不振が続いていた業務用ゲームにあって、久しぶりのヒット商品となった。さらに、その後継機種もヒットし、コナミは業務用ゲームで独り勝ちの状態だった。

目には目を、訴えられたら訴え返す

 99年1月に発売されたジャレコのVJも同じ分野のゲームで、外見や操作方法はビートマニアに似ている。しかしジャレコは、「コナミの特許には多数の先行技術がある」(金沢社長)として、特許自体が無効であると特許庁に訴え出た。

 当初、このやり取りは、コナミとジャレコの間の、技術紛争だと思われた。しかし7月23日、コナミがナムコの経営するゲームセンターからVJの撤去を求める仮処分を東京地裁に申請したことで、局面ががらりと変わった。

 突然、火の粉が降り懸かったナムコの中村社長はコナミの仮処分申請に対し、「一番多くVJを設置しているのは他のメーカー系列のゲームセンターだ。事前の通達もなく、当社だけが対象となるのはおかしい」と疑心暗鬼になる。コナミの仮処分申請の1週間後には、ナムコも特許の無効審査を特許庁に要請、ナムコ・ジャレコ対コナミの構図が出来上がった。

 コナミはナムコのゲームセンターを仮処分の申請対象にした理由を、「証拠がそろったからで、特別な意図はない」としている。しかし、VJを設置している他社のゲームセンターに対しては、いまだに同様の申請はなされておらず、業界内では「コナミが長年ライバル関係にあるナムコを標的にしたのでは」との憶測が広がった。

 8月5日になって、この問題はまた新たな展開を見せる。ジャレコは、コナミが94年に発売したクイズゲームの製造、販売、使用を差し止める仮処分を東京地裁に申請した。その理由は、「ジャレコの実用新案権が侵害されている」というものだ。コナミはこのゲームの製造をすでにやめている。にもかかわらず、ジャレコがそのような申請を出したのは、「コナミがそこまでやるなら」という報復的な意味合いがありそうだ。

 それ以降も、コナミはナムコ、ジャレコの音楽ゲームの新製品に対し、それぞれ製造、販売の差し止めを求める仮処分申請を出している。コナミの姿勢には、音楽ゲームという同社の収益の柱をなんとしても死守したいという執念も見え隠れする。3社の争いに解決の糸口は見えないまま、現在はコナミが取得した特許が有効かどうかの審判結果が出るのを、待っている状況だ。

 「知的所有権を重視するのは国際的にも通用する姿勢だ」。これがコナミの終始一貫した言い分だ。ナムコの中村社長も、「そのような考え方には賛成できる」と、コナミの理念自体は認めている。それにもかかわらず泥沼の特許紛争にもつれ込んだのは、コナミのやり方が、従来の“業界慣習”とあまりにもかけ離れていたからだ。

 これまでゲーム業界では、あるヒット商品が生まれると、多くのメーカーがその分野の類似商品を発売することが当然のごとく行われてきた。真似する側も真似される側も、「このくらいならいいだろう」というあいまいな基準で判断を下してきた。いわば、「もたれ合い」「馴れ合い」の体質が、ゲーム業界全体を覆ってきたわけだ。

 それは、浮き沈みの激しい業界でいつのまにか成り立ってきた“暗黙のルール”でもある。類似商品をめぐってメーカー同士が争うことも時にはあったが、ほとんどが当事者間の交渉により、ライセンス料を支払うなどして解決されてきた。今回のように、知的所有権を振りかざして真っ向から対立することはなかった。それだけに、コナミに突然、「知的所有権」という“正論”を突きつけられた他のメーカーは、「今さら何を言っているのか」と困惑しているというのが正直なところだ。

 ナムコ・ジャレコ対コナミの対立は、これまでの業界の馴れ合い体質を改めて浮き彫りにした。それだけに、コナミの動きを「勇気ある行動」として評価する向きもある。

馴れ合い排除か、泥沼の訴訟合戦か

 しかしその一方で、メーカー間の特許紛争の余波がゲーム機を購入する立場のゲームセンターにまで及んだことで、ゲームセンターを経営する業者の間にコナミへの不信感が一気に高まったのも確かだ。というのも、「メーカー間の特許紛争のあおりで、その都度ゲーム機を撤去していては、安心してゲーム機を購入できなくなる」(あるゲームセンター経営者)からだ。

 ゲームセンター経営者からは、「コナミ以外のメーカーの音楽ゲームがすでに店頭に設置してあると、商品を売ってくれなかった」などといった声も少なからず聞かれる。あるゲーム機の卸業者は、「仮処分の申請で他のメーカーを牽制したのは、自社の音楽ゲームの流通支配力を強めることを狙ったのではないか」と指摘する。

 コナミはここ2〜3年、開発の分社化、独自のゲームソフト流通網の構築、成果主義を徹底した人事制度など、それまで業界にはなかった革新的な経営手法を導入し、業績を急激に伸ばしてきた。シェア拡大に向かう経営方針も、利益を追求する企業としては当然の選択だろう。しかし、同業他社やゲームセンター経営者の間で、コナミに対する不満が急速に膨らみつつあるのも事実。今回の紛争が、業界の馴れ合い排除のきっかけになるのか、泥沼の訴訟合戦に終始するのか。まずは法廷の審判に注目が集まる。(熊野 信一郎)
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