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日本人を笑うNYタイムズ紙へ、英訳付き反論本が海外で反響呼ぶ

1998年10月21日
 ニューヨーク在住の日本人のジャーナリスト、翻訳家、銀行員などが集まる文化・言論グループ「ジパング」が自費出版した本が反響を呼んでいる。

 題名は『笑われる日本人』。英語のタイトルは『JAPAN MADE IN U.S.A.』。誰に笑われているのかというと、米国を代表する新聞ニューヨーク・タイムズにである。不可思議な日本を描く同紙の姿勢に抗議した本だ。

 冒頭では、本の著者たちが「最悪」と考えるここ4年間に掲載された10本の記事を紹介している。

 「人生の良き時も悪しき時も、日本の夫婦に愛なんて要らない!」という見出しの記事は、三重県・大宮町に住む72歳の女性に取材。「(結婚生活40年間)一度も好きだと言われたことがない」といった発言を引用しながら、米国人から見ると異様な日本人夫婦の生活を描いている。

米国人に「異常な日本」植え付け

 同記事の批評を担当した翻訳家の梅沢葉子さんは「取材の目的は、日本の結婚がアメリカに比べて長続きしているワケを探ることだが、大宮に出掛ける前からおそらく答えは決まっていた。日本人がアメリカ人より幸せなはずがないという前提が彼(記者のこと)にはどうやらある」と書いている。

 「日本女性が読む野蛮なコミックス」「今どき、普通の制服にコーフン」「コンピューター時代、いまだにさまよう狐つき」といった見出しを付けた記事への批判が並ぶ。

 「流行通信」元編集長でジパング代表の大竹秀子さんは、出版の動機を次のように説明する。

 「ニューヨークに住み、毎日、ニューヨーク・タイムズを読んでいるうちに、日本の文化を特殊なものとしておもしろおかしく描いている記事が目につくようになった。11人の仲間と話し合っているうちに『これは抗議しておくべきじゃないか』と本の出版を考えた」

 カンパで資金を集めて、この9月に出版にたどりついた。初版2000部を出し、すぐに売り切れ。現在、二版を刷っている最中だ。英語の訳文を付けたために、コロンビア大学の図書館から「蔵書に加えたい」と申し出が来たり、スウェーデンの放送局が本を紹介したいと言って来たりと、日本国外での反響は大きい。

 先の10本の記事のうち7本が、天安門事件報道でピュリツァー賞を受賞したニコラス・クリストフ現東京支局長だ。同書に掲載された本人へのインタビューによれば、クリストフ氏は「日本を神秘的なものとして表現するのは、アメリカの一部あるいはどこか他の国を神秘的に描くのと同じで、別に気になりません。私たちはいつも必ず異なったものに焦点をおきます」と、ジパングとの海外報道への認識の違いを強調している。だが、違いを強調しすぎた先の記事が一般の米国人には、「日本は異常な国だ」との印象を植え付けている可能性が大だ。一般の米国人の日本への知識は、日本人が想像している以上に欠落しているからだ。

日本側がもっと情報発信を

 日本人がほとんどいないニューヨーク市郊外の町に住んでいる筆者は、日本を知らない人が多いことに驚くことがままある。

 クリスマスツリーの話を米国人の主婦としていた時だ。「日本は家が小さいから、大きなツリーを飾るのは無理なんですよ」と説明すると、その主婦は「なぜ、あんなに大きな国土を持つ日本なのに、家が小さいのか」と言って、不思議そうな顔をした。彼女は、中国を日本と勘違いしていた。

 娘の小学校の担任が日本を紹介しようと地球儀を持ち出したが、どこに日本があるかわからない。「この辺だったわよね」と指差していたのは、東南アジアの周辺だった。自宅に米国人を招待したら、「毎日寿司を食べているのかと思ったら、意外と同じ食事をしているんですね」と変に感心された。

 悪気はまったくない。だが、日ごろ接する日本の記事が少ないために、日本情報が抜け落ちているのだ。「同じ時代の同じ問題を抱えていることをわかってもらうためには、もっと日本側が情報を発しないといけないですね」という大竹さんの話には、うなずけるものがある。


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