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プロフィール

矢部武 ジャーナリスト
矢部武 ジャーナリスト
1954年、埼玉県生まれ。
米アームストロング大学大学院修士課程修了。
1974年に渡米。
「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。
現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。
著書に『アメリカ病』『携帯電磁波の人体影響』『少年犯罪と闘うアメリカ』など多数。
Good Doctor NET メンタルヘルスとリワーク

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.22

元商社マンの人生再設計~塾の英語講師デビュー

ジャーナリスト 矢部武
2013/07/24

前回のコラムで紹介した高齢者の生きがい就労プロジェクトの受け入れ先の1つに、学習塾「ネクスファ柏」(千葉県柏市)がある。ここでは、海外経験豊富な商社マンやプラントエンジニアなどの退職者が、小・中学生に海外で通用する英語能力や国際感覚を身につけさせるための授業を行っている。

「日本の未来をつくるために高齢者の力が必要」と言い切る塾長のもとで、子どもたちは楽しみながら英語の対話力を身につけ、シニア講師は新たな生きがいを見出し、生活リズムを取り戻している。高齢者の人生再設計のテーマも踏まえながら、シニア講師の生活を追った。

「英語対話」を重視した授業

豊富な海外経験を活かし、中学生に英語を教える
江木隆之さん

元商社マンの江木隆之さん(65歳)は毎週金曜日の夕方、ネクスファ柏で小学5~6年生と中学生に英語を教えている。大学院生の講師が、いわゆる受験英語を教え、江木さんらシニア講師は外国人と対話できるようにするための「英語対話」の授業に力を入れる。

江木さんは、英語絵本の読み聞かせをしたり、絵が描かれたパネルを使って生徒にその状況を英語で説明してもらったりするほか、自身の米国での体験談をいろいろ聞かせる。

例えば、テネシー州ナッシュビルの空港でこんなことがあった。航空会社の職員に「今からアトランタへ行きたい」ということを、「アトランタ、アトランタ」と一生懸命言っても、「トロント?トロント?」と聞き返されるばかりで全く通じない。そうしている間にアトランタ行きの便は出てしまった。そこで、「アトランタ」と紙に書いて渡すと、職員はやっと、「オー、アッランタ」と理解してくれた。

英語で「t」は「ト」ではなく、「トゥッ」と軽く発音するので、「アトランタ」は「アッランタ」のように聞こえる、それを日本語風に「アトランタ」と言うと、「トロント」に聞こえてしまう。そういう話をすると、生徒たちは皆、「ほー」と納得したような顔をするという。

江木さんはこう指摘する。「コミュニケーションは相手の立場になってものを考えることが大切です。自分の言いたいことを英語で言えるようにするのは大事ですが、相手が理解してくれる英語を話さなければならない。マクドナルドのハンバーガーを日本語風に言っても通じない。それと、時にはジャスチャーや立ち振る舞いでコミュニケーションをとることも大切です」。

ネクスファ柏の杉浦正吾塾長はシニア講師を雇う理由を、「社会の厳しさや交渉術などいろいろな経験をされているシニアの方には、パーケージ化された教材を使っての授業だけでなく、自身のキャリアに基づいた英語を教えていただきたいのです」と説明する。


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